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築50年の新居
新婚旅行を終え、先延ばしになっていた新居が決まった。
「新しく部屋を用意するつもりだったが、時間がかかりそうなので、しばらくはここでいいだろう」
そうして案内されたのは、築50年の木造一戸建て。
それは、夫がこれまで暮らしていた実家だった。
タワーマンションや新築を想像していたE美は、愕然として心の何かが崩れていった。
今は亡き夫の両親。
玄関を入った瞬間から、過去の生活を思い起こさせる独特の生活臭。
古いキッチン、年代物の家電。
E美の実家の方が、よほど新しいと感じるほどだった。
「出張が多いから、家にはあまり帰らない」
そう言う夫。
そして、
「生活費は5万で足りるよね。これから家のこと頼むね」
5万?何が5万?
「食費と日用品で十分でしょ?」
当たり前のように言う夫に、E美は何も言えなかった。
あの高級店での時間や一流ホテルでの挙式は、裕福な生活への幕開けではなく
ただの「特別な時間」だったのだと、このとき初めて気づいた。

気づかなかった違和感
結婚式前にはすでに寿退社していたE美。
お金に不自由することのない未来を想像し、貯金もほとんど使ってしまっていた。
夫がこれからも連れて行ってくれるであろう高級店に相応しい装いをするために揃えたブランド品の数々。
結婚式前に、夫が仲人を頼んだ友人にE美を紹介する機会があった。
緊張するE美に
「いつも通りのE美で大丈夫だから」
と優しく微笑んでくれた当時の夫。
しかし帰り際
「挨拶すらロクにできんのか・・・」
と呟く後ろ姿に、空耳かと疑った。
あの呟きが彼の正体だったと、ようやく気がついたE美。

